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JOGA
JOGA12
(2010a)

東アジア・オーストラリア地域渡り性水鳥重要生息地ネットワーク(ガンカモ類)支援・鳥類学研究者グループ:JOGA
第12回集会「ガンカモ類における個体群動態の把握と個体群管理に向けた課題」

講演1

米子水鳥公園におけるハクチョウへの首環標識調査
個体群動態の推定

神谷 要(中海水鳥国際交流基金財団)


 コハクチョウの年齢は、その生まれた年において体羽が灰色かがっていることから、一年目の若鳥のみが他の年齢の個体と識別できる。しかしながら、個体群の他の年齢構成は、その年の観察だけでは知ることができない。
 そこで、2001年度の日本鳥学会での自由集会JOGA3「越冬地におけるガンカモ類の羽衣と社会行動の観察」において、過去の首環標識(Kondratiev 1984)観察結果より得られたコハクチョウの生存曲線をもちいて推定する方法を説明した。その方法とは、ある飛来地において、t齢のコハクチョウの個体数は、t年前の若鳥の飛来数に生存率を掛け合わしたものと推定する方法である。移入・移出のない飛来地とした場合、毎年の若鳥の飛来数をカウントすれば、その年飛来した個体群の年齢構成を求めることができる。また、各年齢の推定飛来数の和は、個体群に移入・移出のなかった場合のコハクチョウの推定総飛来数となる。この算出した推定総飛来数と実際の飛来数を比較すると、その飛来地の飛来数が個体群自身の増減によるものなのか、移入・移出によるものなのか判断できる。ただ、この推定を行うには、10年以上の若鳥のカウント調査の継続が必要である。

(個体数)

図1

(齢)

図1.中海におけるコハクチョウ個体群の年齢構成の予想(2010年1月)

 今年、2000年から2009年までの10年分の中海のコハクチョウの幼鳥の飛来数のデーターがそろい、2009年度に中海に飛来したコハクチョウの年齢別分布図を推定することができた。
 その結果、中海に飛来するコハクチョウの齢は、図1のような構成であることが推定され、予想総飛来数は、1012羽となった。ところが、2009年の中海に飛来した実際の飛来数は1655羽であり、5割もの差があった。この差については、中海ではコハクチョウの移入があったと予想される。ただし、この推定が正しい条件として1980年代に推定されて生存曲線が、現在のコハクョウの個体群でも当てはまることや、若鳥のカウントにおいて過少にカウントしていないことが求められる。
 今後、より正確なコハクチョウの生存曲線の製作と、全国的なコハクチョウの若鳥の飛来数のカウントにより、コハクチョウの個体群動態が正確に予想できると考える。

[JOGA第12回集会「ガンカモ類における個体群動態の把握と個体群管理に向けた課題」2010年9月19日]

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URL: http://www.jawgp.org/anet/jg015a.htm
2010年11月23日掲載,JOGA