JAWGP

ガン類調査マニュアル

カリフォルニアに現れるカナダガンの亜種に付いての野外での特徴

P.F.スプリンジャー・R.B.マックノブ

原典: Paul F. Springer & R.B. McNab. 1990. Field Notes on Subspecies of Canada Geese (Branta canadensis) Occuring in California. 2pp.

訳:香川 裕之・呉地 正行

[ PDF ] [ Sheet ] [ Back ]


1.亜種ヒメシジュウカラガン B.c. minima Cackling Canada Goose / Cackler

  1. カナダガンの中でもっとも小さく、マガモの1.5倍程の大きさである。
  2. 比較的はばたきは速い。
  3. 甲高い音でキャク、キャクと鳴く。
  4. 胸は暗褐色か赤褐色であるが、しばしば紫色味を帯びる。
  5. くちばしは短くて太く、その長さは普通32mmを越えることはない。
  6. 首の付け根に白い輪が現れることもあるが、あっても非常に細いか不完全であることが多い。
  7. くちばしから前頭部にかけての形と頭部は全体的に丸味をおびている。
  8. 左右の頬の白斑はしばしば顎の下でつながっているが、黒い羽毛で分断されていることのほうが多い。
  9. [カリフォルニアでは]黄色い首環が付いていることがある。(ただしマガンにも同様の首環が付いていることがある)

B.c. minima

2.亜種シジュウカラガン B.c. leucopareia Aleutian Canada Goose

…絶滅の危機に瀕している亜種…

  1. 亜種ヒメシジュウカラガンよりわずかに大きい。
  2. 胸の色は変化に富むが、普通は灰褐色で紫色味を帯びることはない。
  3. くちばしの長さは普通32〜38mmである。
  4. 全ての成鳥には首の付け根に白線の輪があり、普通は幅が広くはっきりしている。(ただしその年生まれの若鳥の場合、翌春までの間は白輪はないか、あってもまだらにある程度である)
  5. 首の白輪の下縁には普通細い暗色の境界線が出る。
  6. 亜種シジュウカラガン程度の大きさの他のカナダガンとは対照的に前頭部はせり上がり気味で頭頂部は平らで頭部が四角く見える。
  7. 左右の頬の白斑はほとんどの場合顎の下で黒い羽毛で分断されている。
  8. [カリフォルニアでは]淡灰色の首環や青、黄、赤、緑色の足環を付けていることがある。

B.c. leucopareia

3.亜種チュウショウカナダガン B.c. taverneri Taverner's Canada Goose

[訳者注:亜種チュウショウカナダガン B.c. taverneri を亜種チュウカナダガン B.c. parvipes に含める研究者もいる]

  1. 多くの点で亜種シジュウカラガンに似ているが、亜種チュウショウカナダガンのほうが普通わずかに大きい。
  2. 胸の色は変化に富むが、普通亜種シジュウカラガンよりわずかに淡く、亜種チュウカナダガンよりは暗色である。
  3. 首の付け根に白輪があることもあるが、たいていは不完全である。
  4. 亜種シジュウカラガンより頭部は丸味をおびる。
  5. 左右の頬の白斑は普通は顎の下でつながっているが、いつもつながっているというわけではない。

B.c. taverneri

4.亜種チュウカナダガン B.c. parvipes Lesser Canada Goose

[訳者注:亜種チュウカナダガン B. c. parvipes に亜種チュウショウカナダガン B. c. taverneri を含める研究者もいる]

  1. 中型のガンで、普通は亜種チュウショウカナダガンよりわずかに大きい。
  2. 胸の色は淡い。
  3. 全体的な形や色合いは『小さな亜種オオカナダガン』といった感じである。
  4. 左右の頬の白斑は殆どいつも顎の下でつながっている。

B.c. parvipes

5.亜種クロカナダガン B.c. occidentalis Dusky Canada Goose

  1. 中〜大型のガンで、亜種チュウカナダガンよりは大きいが亜種オオカナダガンよりは小さい。
  2. 胸の色は暗色でチョコレートの様な褐色味に富むのが特徴だが、灰色味がかるものもある。
  3. 黒い首とチョコレート色の胸との間にははっきりとした境界は見られない。首の付け根に白い首輪が見られる個体も少数ある。
  4. カリフォルニアでの分布は局地的で、普通カリフォルニア州のかなり北部の沿岸地域で見られる。

B.c. occidentalis

6.亜種オオカナダガン B.c. moffitti Western Canada Goose

  1. 合衆国西部地域ではもっとも大きいカナダガンで、亜種シジュウカラガンの2倍の大きさがある。
  2. はばたきは比較的ゆっくりである。
  3. 鳴き声は重く、鳴り響くように『ホーンク(ahh-onk)』と鳴く。
  4. 胸の色は淡い。
  5. くちばしと首は長い。
  6. 朱色の首環を付けていることがある。

B.c. moffitti

原注:

これらの一般的な記述は幾分曖昧に思えるかもしれないが、それはこれが現実の世界だからである。これらの記述にとてもよく合う鳥もいれば、そうでない鳥もいる。野外では確実に亜種の識別ができないものもいる。カナダガンの亜種は基本的には小さいものから大きいものへの連続的な変化の形態であり、その境界では多くの重複がある。鳴き声もまたヒメシジュウカラガンの『キャク・キャク』からオオカナダガンの『ホーンク』まで連続的である。これらの亜種に関わる様々な微妙な違いを識別するには経験を重ねる以外に道はない。訓練をする事によりこれらの鳥の識別に上達することができる。

出典

[ウェブ注1]日本鳥類目録(日本鳥学会 2000)では,シジュウカラガンという和名が,種名 Branta canadensis と亜種名 B.c. leucopareia の両方に用いられています.このことがしばしば混乱を引き起こす原因になっています.雁を保護する会は,この混乱を防ぐために,種名 B. canadensis としては『カナダガン』を用い,絶滅が危惧される亜種 B.c. leucopareia だけを『シジュウカラガン』と呼んでいます.

[ウェブ注2]ここに記述される各亜種の特徴をチェックするための観察記録シートをつくり,PDFファイルで提供します.ご利用のいただき,日本に渡来するカナダガンの亜種の検討のための資料としてデータを本会に提供いただければ幸甚です.

[ PDF ] [ Sheet ] [ Back ]


雁を保護する会 Japanese Association for Wild Geese Protection

 989-5502 宮城県 栗原郡 若柳町 字川南南町16
 TEL 0228-32-2004 / FAX 0228-32-3294
 E-mail: secretariat@jawgp.org

2001年9月27日掲載,2004年11月8日改訂.