はじめに



 最近、インドネシアでの焼き畑が大きな問題となっている。60万haから70万haともいわれる広大な熱帯林の消失、近隣諸国への煙害、更には死者も出るという最悪の状態である。これは、すべて経済活動に絡むもので、経済価値の見出せない熱帯林を焼却し、農園を作るために行っている。これは、本来の焼畑農業から大きく逸脱したものである。このような自然を無視し、経済のみを優先させる開発は、地球温暖化の加速、異常気象による食料不足などを引き起し、我々に重くのしかかってくることは明らかである。

 さて、それでは我々が住んでいる地域はどうであろうか。

 登米・栗原は、自然豊かなところという一般的なイメージがある。昔は、その通りであったが、今は果たしてどうなのか。見た目には緑豊かな田園風景が飛び込んでくる。ラムサール条約の登録湿地に指定された伊豆沼とそこにつどう水鳥の姿がある。しかし、注意して見ると、川は護岸工事で緑の土手がコンクリートになり、たくさんあった池沼や湿地の多くは無くなってしまっている。この影響で、水生生物は減少、野鳥等の小動物の安住の地「豊かな自然」がほとんど無くなってきている。更には、子供たちが自然の中で、遊べる場所も少なくなってきており、健やかに育つ環境が消えつつある。

 昔はどこでもできた釣り、今は、限られたわずかな池沼でしかできなくなってきているが、それも魚を放流して釣り場を確保するという人工的な釣り場と化している。

 人間や野生生物が生きていく土台となる「自然」、我々は物質の豊かさを追い求め、資源を浪費し、自然との調和を損ない、生きていく上で最も大切なものを破壊し続けている。自然豊かといわれる登米・栗原においても、自然は少なくなり環境が悪化しているのが現状である。

 このような状況の中、登米・栗原の自然保護団体や農業者仲間で、自然と人間が共生できる環境をどうしたら見出せるかということについて、とめ・くりはら百姓環境フォーラム実行委員会を結成し、フォーラムを94年から開催。本年度で5回(96年に2回開催)となるこのフォーラム、グリーンツーリズム・エコツーリズムを取り入れた自然との共生・ラムサール条約の理念であるワイズユースを模索している。

 実行委員会では、この自然との共生を地域で具体的に取り組むためにはどうすればよいか、「自然と農業を考えるアンケート」を6月から7月にかけて実施し、その方向性や具体的な方策を、この冊子に「アンケートの報告とこれまでの活動報告」としてまとめた。主な内容は、街や農村地域それぞれに合った自然の回復、自然と農業(人)の共生を目指して、ビオトープ・グリーンツーリズム・エコツーリズムによる地域の活性化である。

 ビオトープやグリーンツーリズム・エコツーリズムは、個人・グループ・地域、そして行政など、取り組める規模は違ってくるが、どこでも実施可能なものである。今一人一人が足元から行動することが大切な時となっている。

 この冊子が、多くの人たちに、地域に、更には行政が取り組むにあたっての参考になれば幸いである。また、この報告書作成にあたり、(財)日野自動車グリーンファンドから助成をいただきましたこと感謝申し上げる次第である。

 1997年10月
 とめ・くりはら百姓環境フォーラム実行委員会