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JOGA

ガンカモ類重要生息地ネットワーク支援・
鳥類学研究者グループ:JOGA
第6回集会 事例報告3

新潟平野の主な湖沼でのガンカモ類生息状況と保全の取り組み

佐藤 安男佐潟水鳥・湿地センター)

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<新潟の自然環境と新潟平野>

新潟平野の湖沼の位置関係

新潟平野の湖沼の位置関係。

 新潟県はその県境を 2000級の越後山脈からなり、日本海からの季節風を堰きとめる形で冬季間、世界一ともいわれる降雪をもたらします。そして山々からの雪が恵みの水となり、沢から川へ、川は平野を潤し、かつては氾濫を繰り返し海へと流れています。海岸線は長く砂丘列を形成し広大な新潟平野と海とを分断する形になっています。それら新潟平野のグローバルな歴史の経過の中に、信濃川阿賀野川など大河、自然豊かな湖沼が点在して新潟の自然環境を特徴つけています。そこには毎年10万羽を超えるガンカモ類が主に越冬地として生息しています。
 環境省が全国の都道府県に依頼している「カモ科鳥類の生息状況調査」(引用:「野鳥新潟」(新潟県野鳥愛護会会報)92号・96号・99号・103号・107号・111号・114号・118号・122号・125号)は35回を数え、県内の調査者はかなりの精度で調査し、努力を重ねています。そのデータからは、ガン類については気象条件などにその生息地に変動がみられるので一律とはいきませんが、ハクチョウ類、ガン類とも微増、またはここ数年特にコハクチョウなど増加傾向をうかがい知ることができます。
 また、この調査だけでなく、各団体・各氏の力で各地各様の調査が進められています。その中のひとつ「新潟県湖沼ネットワーク」の調査とその概要をお伝えします。



新潟県湖沼ネットワーク
調査地調査者(代表)
福島潟水の駅「ビュー福島潟」
瓢湖水原町観光管理事務所(現 阿賀野市
瓢湖管理事務所) 佐藤 巌
鳥屋野潟日本野鳥の会新潟県支部 岡田 成弘
佐潟佐潟水鳥・湿地センター 佐藤 安男

<新潟県湖沼ネットワークの調査概要>

 新潟平野にある湖沼・四湖(豊栄市福島潟阿賀野市瓢湖、新潟市・鳥屋野潟及び佐潟)が毎週同時調査を実施、現在も毎週調査活動を継続しています。(現在は朝日池も参加)各湖沼間で連携することにより、特にハクチョウやヒシクイの新潟平野内での動きがダイレクトなイメージとして捉えることができ、各施設での市民啓発、調査者・バーダーへの情報提供に役立っています。


ハクチョウの個体数の推移

オオヒシクイの個体数の推移

新潟平野の各湖沼におけるハクチョウの個体数の推移(その多くはコハクチョウで,オオハクチョウも少し含む)。2000年度冬期。新潟県湖沼ネットワーク。

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10月末〜11月

11月後半に瓢湖の飛来数が 6800羽と最大になったあと、12月にかけて減っていく。代わって鳥屋野潟と佐潟の飛来数が増えていく。

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12月

瓢湖の減少と反比例し鳥屋野潟と佐潟が増え、年末では瓢湖と佐潟がほぼ同数になる。

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1月

1月では四湖の数が各々最も接近し全体にばらけている様子がうかがえるが、小さな増減は相関関係にあることもうかがえる。

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2月

1月末からの寒波と共に佐潟とその周辺への飛来数が大きくなったことがよくわかる。積雪の影響で採食環境が悪化した時期であったが2月末には再び瓢湖周辺の飛来数が高くなる。

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3月

2月末から北帰に向け動き始める。3月になれば四湖の総数もかなり減り始め、月末には最大飛来数の十分の一程度になる。

上記の推移を模式的に図に表したものが右の図です。灰色のセルをクリックするとその時期の生息状況に図が置き換わるように,JavaScript で記述しています。

新潟平野の各湖沼における亜種オオヒシクイの個体数の推移。2000年度冬期。新潟県湖沼ネットワーク。

四湖のなかでみれば圧倒的に福島潟への飛来が大きい。ハクチョウのような単純な解析がしにくいものの、主に佐潟が降雪時の避難地として利用が確認された。2月2日の数字が物語るように、上越地方の朝日池や県外の湖沼へも移動していると考えられた。

ハクチョウの季節的な移動の模式図
ハクチョウの季節的な移動の模式図

10月から11月北から渡ってきたハクチョウは瓢湖を中心に生息します。
12月から1月積雪状況に従って,雪の少ない佐潟へ移動します。11月から1月(先読み)
2月から3月瓢湖の積雪が緩和すると瓢湖へ戻り,そののち北帰します。2月から3月(先読み)

 特にハクチョウの各地データを冬季間中つなぎ合わせていくと冬季間全体の総数はあまり変動がみられないものの、積雪など気象条件により湖沼間を移動しねぐらをとっている状況を確認することができました。これは、餌場となる水田の環境、積雪などが大きく関係しているものと考えられます。いづれにしても点在する湖沼群を状況に応じ利用していること、水田や河川を含めた新潟平野全体が大切な彼らの生息地と考えてよいと思います。

<湖沼の状況と取り組み−佐潟と福島潟から−>

佐潟

佐潟:湿地 76ha,国設鳥獣保護区 265ha,重要生息地ネットワーク参加,ラムサール条約登録湿地。著者撮影。

 佐潟では行政や地元住民、農業者、漁業者、環境NGO等の間の総合的な合意に基づき佐潟周辺自然環境保全計画が策定され保全が推進されています。また、佐潟水鳥・湿地センターを拠点の環境教育・啓発活動が行われるとともに毎月2回ボランティア解説員「佐潟自然散歩」などが定期的に実施されています。また、地元赤塚住民による保全活動の動きが芽生えつつあり環境省グリーンワーカーを地元団体が実施、主体的に佐潟の保全に関わろうという動きがでています。また、ハス茶作成の試行などは潟の産物を活用していこうという前向きな取り組みのひとつといえます。


佐潟での取り組みの課題

  1. 多くの市民の関心と理解。保全への啓発、学習、体験。
      →生態系の保全・ガンカモ類の保護へ

  2. 「地元の自然は地元が主体となって守り伝える」スタンス。
      →保全の主体の認識

  3. 新潟市13市町村合併と各地域間連携
      →野鳥(ガンカモ類を中心)の視点での交流を。

ワイズユースの理解と実践を

ハスの蕾の刈取り

これまで盆花としてハスのを収穫してきた。

ハス茶の可能性を地元団体で模索中。

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ハス茶

写真:著者撮影。


福島潟

福島潟:湿地 193ha,国設鳥獣保護区 163ha,重要生息地ネットワーク参加。写真提供:水の駅「ビュー福島潟」。

 福島潟ではゾーニングした管理運営を進め、自然文化活動として自然科学だけでなく自然を広く捉えた普及活動、市民参画として地元市民を主役に湿地を保全する活動を促進しています。また、野鳥保護活動でオオヒシクイの保護の普及活動(豊栄市はオオヒシクイを市の鳥にしている。)のほか繁殖地調査の実施と成功、また個体数調査を市民と定期的に実施しています。このほか特徴的な活動として自然文化基金(「市民からの寄付金」と「市の予算」により基金を作り、福島潟保全に役立てている。)水の駅サミット(水に関わりのある地方自治体と「水の駅」をキーワードにした「まちづくり」ネットワーク作りに取り組んでいる)にほんかい自然写真学校(撮影技術だけでなくマナーも教える写真学校を開催し、写真を通じた自然文化活動。)等がおこなわれています。


<これから>

 ガンカモ類にとって個々の湖沼や生息地の重要性はいうまでもありませんが、こと新潟平野全体はつながりをもったひとつの生息地ととらえる視点をもってよいと考えます。また、かつてのその環境はどうであったか、どう推移してきたか、どうありたいのか。人との関わりも含めたさらなる研究と理解、具体的でわかりやすい啓発活動と協働がさらに必要とされます。

佐潟の水鳥

佐潟の水鳥:上段は亜種オオヒシクイ,下段左は亜種アメリカコハクチョウ,同右はハクチョウのねぐら入り風景。著者撮影。


佐潟での保全活動

佐潟での保全活動。著者撮影。


[JOGA第6回集会「ガンカモ類重要生息地における保全状況の過去10年の進展と今後の課題」2004年9月18日]

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このJOGAページは「「東アジア地域ガンカモ類保全行動計画・重要生息地ネットワーク」公式ホームページ(http://www.jawgp.org/anet/)の一部です.2004年9月27日掲載, 10月7日更新.

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