[ 重要生息地ネットワーク ] [ 日本鳥学会 ] [ 環境省「インターネット自然研究所」 ]

JOGA

ガンカモ類重要生息地ネットワーク支援・鳥類学研究者グループ:JOGA
第7回集会「ガンカモ類の個体数の継続的調査 モニタリングサイト1000 − 2004年度の報告と課題」
ガンカモ類のモニタリングサイト1000は試行調査を実施中の段階です.
報告3(改訂版)

モニタリングサイト1000 ガン・カモ類調査 16年度試行調査報告(概要)

村井 英紀(日本鳥類保護連盟)


1.目的

 本報告はモニタリングサイト1000の一環として実施したカモ科鳥類調査(ガン・カモ類調査)の16年度分の概要報告です。この調査は、ガン・カモ類の主要な渡来地として選定された調査対象サイトごとに種と個体数を長期的に調べ、基礎的な渡来状況を収集・蓄積することを目的としたもので、全国的な渡来総数の把握を意図としたものではありません。また、16年度調査は、試行的に実施したものです。

*重要生態系監視地域モニタリング推進事業(「モニタリングサイト1000」)は、全国レベルで動植物の生息及び生育環境を長期的にモニタリングし、基礎的な環境情報を継続的に収集することにより、各生物種の増加、減少、生態系の劣化その他の問題点の兆候を早期に把握し、生物多様性の適切な保全のための対策を講ずることを目的としています。

2.調査概要

 調査対象サイトの選定は、
渡りの中継地として重要な湖沼等(80サイト)です。

 調査は、全てのサイトで「湖沼等調査:B」を実施し、種毎の渡来数をカウントします。そのうち、ガン類やハクチョウ類の主要な渡来地(15サイト)では、湖沼等調査とともに日中の採食地を把握する「広域調査:A」を実施します。なお、調査地は、基本調査地(53サイト)と、随意調査地(27サイト)に区分されています。

 16年度の調査実施数は、基本調査地(53サイト)では、湖沼等調査が冬51サイト(凍結のため滞在がないサイト含む)でしたが、春36サイトに減少しました(一斉調査結果を準用したサイト含む)。また、広域調査(15サイト)では、冬7サイト、春8サイトで実施されました。

随意調査地(27サイト)では、冬は全数の27サイト(凍結等含む)でしたが、春は16サイトでした。

表2.1.調査実施状況(16年度試行調査).一斉はカモ科鳥類調査結果を準用.

モニ1000
調査
一斉調査
準用
凍結・
通行止等
未実施 
基本調査地
湖沼等 冬232082
31513
広域 冬7
35
8

7
随意調査地
13
14
15
111

図2.1.調査サイト.

3.結果概要

(1)個体数

 ガンカモ類の総数は、冬(越冬期)は 454000羽でした。一方、春は、サイト毎に異なる渡りの最盛期における調査のため、重複カウントの可能性がありますが、延べ 434500羽となりました。
 ガン類、カモ類については、冬春ともほぼ同数でしたが、ハクチョウ類では春が冬の3分の2と減少しています。

 確認サイト数は、ガン類で冬22サイトから春32サイトへ増加しましたが、ハクチョウ類、カモ類では、冬、春とも大きな差がないようです。

表3.1.1.ガン・カモ類総括.

構成%サイト数春(延べ)構成%サイト数
全体454169
78434541
66
ガン類12244427.02212561528.932
ハクチョウ類379988.335250625.838
カモ類29372764.74728386465.345

図3.1.1.ガンカモ類総括図(冬、春).
図3.1.1.ガンカモ類総括図(冬、春).

(2)サイト毎の各種群の構成比

 サイト毎にガン類、ハクチョウ類、カモ類の個体数構成比を求め、特徴を整理しました。ただし、ガン類では、函館湾や陸奥湾に集中的に分布する海洋性のコクガンは、構成比の比較から除いて各サイトの特徴を分かりやすくしています。

 全国的にみるとカモ類の構成比が高いサイトが多い。ハクチョウ類の構成比が高いサイトは北海道、新潟で多いことが分かりました。
 ガン類(コクガン除く)は、越冬地として有名な宮城県(伊豆沼等)で集中的にみられたほか、八郎潟や、宍道湖、片野鴨池、宍道湖(斐伊川河口)に多いことが分かりました。

図3.2.1.サイト毎の各種群の構成比:冬期.

 カモ類の構成比が高いサイトが多く、青森ではハクチョウ類の構成比が高くなりました。
 ガン類(コクガン除く)は、宍道湖(斐伊川河口)、片野鴨池で見られますが、渡りの中継地である北海道で構成比が大幅に増加しています。

図3.2.2.サイト毎の各種群の構成比:春期.

(3)優占種・サイト出現率(春は、渡りに応じた調査で重複カウント等あるため参考値)

ハクチョウ類
 冬の優占種は、コハクチョウが(63%、23900羽)でした。サイト出現数は、コハクチョウ冬が21サイト、サイト出現率60%、オオハクチョウは、冬26サイト、74%でした。

表3.3.1.ハクチョウ類の優占種・サイト出現率.
優占度%サイト数出現率%優占度%サイト数出現率%
*優占種(種の個体数種群計),サイト出現率(種の確認サイト数種群がいるサイト数計).
コハクチョウ2395663.02160859734.41847
オオハクチョウ1401936.926741563962.63079
コブハクチョウ230.139150.1513
アメリカコハクチョウ60.041110.013
(種不明)00.0
08103.238

ガン類
 冬の優占種はマガンが冬(88%、107700羽)、次いでヒシクイが冬(11%、13400羽)でした。サイト出現率は、マガンが冬11サイト、50%で、ヒシクイは冬の13サイト、59%でした。

表3.3.2.ガン類の優占種・サイト出現率.
優占度%サイト数出現率%優占度%サイト数出現率%
*優占種(種の個体数種群計),サイト出現率(種の確認サイト数種群がいるサイト数計).
マガン10773488.011508680569.22063
ヒシクイ1343911.013593051324.32063
コクガン12611.073215411.2722
ハクガン100.029120.039
カリガネ00.0
010.013

カモ類
 冬はスズガモ(海ガモ類)が最大優占種(23%、67200羽)でしたが、淡水カモ類ではマガモ(冬22%、63600羽)で、オナガガモ、コガモ、ヒドリガモの順でした。サイト出現率は、冬はマガモ(87%)、オナガガモ(70%)、コガモ(64%)でした。

表3.3.3.カモ類の優占種・サイト出現率.
優占度%サイト数出現率%優占度%サイト数出現率%
*優占種(種の個体数種群計),サイト出現率(種の確認サイト数種群がいるサイト数計).
スズガモ6721322.9194014715851.81636
マガモ6358221.641872884010.23578
オナガガモ4962716.93370198707.03169
コガモ3192410.9306481702.93169
ヒドリガモ187616.427573813313.43476
カルガモ122854.2306444261.62760
ホシハジロ109433.7234943191.51636
キンクロハジロ105453.6204372962.62351
ホオジロガモ45451.5224716590.62044
ハシビロガモ25660.9143012260.41840
カワアイサ15590.5194021830.81840
オカヨシガモ13730.512261620.1818
ヨシガモ6040.28172790.11738
ミコアイサ6000.223495120.22760
トモエガモ5840.212261470.1613
ウミアイサ5560.2173619820.71533
シノリガモ1560.1491470.137
オシドリ1470.13611280.424
クロガモ1250.0494990.2716
コオリガモ340.024120.024
アメリカヒドリ80.04910.012
ビロードキンクロ70.024270.049
ツクシガモ60.01250.012
シマアジ



420.037
カモ類(種不明)159775.436156405.5716

(4)集中サイト
 (春は、渡りに応じてサイトの調査時期が異なるほか、調査未実施サイトもある)

ハクチョウ類
 最上川河口が最大(11900羽)で集中率(サイト個体数種の個体数計)31%であり、次いで、福島潟、佐潟、瓢湖、厚岸湖の順でした。春は、風連湖が最大(21%、5200羽)、次いで、宮島沼、クッチャロ湖、野付湾、狄ヶ館溜池の順でした。
 出現サイトは、冬35に対して、春が38サイトとわずかに増加しました。上位サイトの冬の集中率合計は、69%でした。

総数 37998羽,出現 35サイト,上位集中率計 69.3%
最大集中第2集中第3集中第4集中第5集中
サイト名54最上川河口65福島潟68佐潟66瓢湖15厚岸湖
個体数119504310397336322457
集中率%31.411.310.59.66.5

図3.4.1.ハクチョウ類の冬期集中サイト.

(延べ数)総数25062羽,出現 38サイト,上位集中率計 57.6%
最大集中第2集中第3集中第4集中第5集中
サイト名13風連湖27宮島沼4クッチャロ湖12野付湾43狄ヶ館溜池
個体数52643500204419981630
集中率%21.014.08.28.06.5

図3.4.2.ハクチョウ類の春期集中サイト.

ガン類
 冬は蕪栗沼が50%超で最大(61700羽)で、伊豆沼・内沼、化女沼、福島潟、宍道湖の順でした。春は、ウトナイ湖が最大(34%、42800羽)で、宮島沼、袋地沼、三日月沼、化女沼の順でした。
 出現サイト数は、冬22サイトに比して、春が32サイトと増加しました。上位サイトの冬の集中率合計は、91%に達しています。

総数 122444羽,出現 22サイト,上位集中率計 90.7%
最大集中第2集中第3集中第4集中第5集中
サイト名47蕪栗沼48伊豆沼・内沼50化女沼55福島潟77宍道湖
個体数61752278961353147373119
集中率%50.422.811.13.92.5

図3.4.3.ガン類の冬期集中サイト.

(延べ数)総数 125615羽,出現 32サイト,上位集中率計 75.5%
最大集中第2集中第3集中第4集中第5集中
サイト名34ウトナイ湖27宮島沼28袋池沼24三日月沼50化女沼
個体数4280031685913259125341
集中率%34.125.27.34.74.3

図3.4.4.ガン類の春期集中サイト.

カモ類
 冬は霞ヶ浦が最大(17%、51500羽)で、三番瀬、最上川河口、葛西臨海公園、中海の順でした。春は、三番瀬が最大(23%、65000羽)で、風連湖、野付半島、葛西臨海公園、河北潟の順でした。
 出現サイト数は、冬47サイトに比して、春が45サイトと同様です。上位サイトの冬の集中率合計は56%でした。

総数 293727羽,出現 47サイト,上位集中率計 56.3%
最大集中第2集中第3集中第4集中第5集中
サイト名56霞ヶ浦61三番瀬54最上川河口62葛西臨海公園76中海
個体数5151842138372201833716254
集中率%17.514.312.76.25.5

図3.4.5.カモ類の冬期集中サイト.

(延べ数)総数 283864羽,出現 45サイト,上位集中率計 66.4%
最大集中第2集中第3集中第4集中第5集中
サイト名61三番瀬13風連湖12野付湾62葛西臨海公園70河北潟
個体数6498439866351413157417020
集中率%22.914.012.411.16.0

図3.4.6.カモ類の春期集中サイト.

[JOGA第7回集会「ガンカモ類の個体数の継続的調査 モニタリングサイト1000 − 2004年度の報告と課題」2005年9月16日]

[ 重要生息地ネットワーク ] [ 日本鳥学会 ] [ 環境省「インターネット自然研究所」 ]

このJOGAページは「東アジア地域ガンカモ類保全行動計画・重要生息地ネットワーク」公式ホームページ(http://www.jawgp.org/anet/)の一部です.2005年9月10日掲載, 2006年1月22日改訂版掲載.

Valid HTML 4.01! Valid CSS!