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JOGA
JOGA10
(2008)

東アジア・オーストラリア地域渡り性水鳥重要生息地ネットワーク(ガンカモ類)支援・鳥類学研究者グループ:JOGA
第10回集会「ガンカモ類外来種の現状と対策及び今後の課題」

報告3

霞ヶ浦におけるコブハクチョウの生息・繁殖状況と給餌の影響

土屋 結(筑波大・生命環境)藤岡 正博(筑波大)


 コブハクチョウは主にヨーロッパに生息しており、現在日本で生息している個体は、飼育されているものか、野生化したものである。他の水鳥類や植生への影響が懸念されているが、個体数や繁殖生態は詳しく調べられていない。また、外来種であるにもかかわらず給餌が行われたり保護されたりすることも多く、これらは個体数増加要因となっていると考えられる。そこで、国内でもっとも多数が生息する霞ヶ浦においてコブハクチョウの生息・繁殖状況を確認し、給餌が行動や繁殖に及ぼす影響を調べた。

 調査は、2007年3月末から7月初めの期間で霞ヶ浦全域を3回周り、個体数や繁殖状況を確認した(繁殖調査)。確認された繁殖つがいに関しては、日中の時間帯を3つに分けて1時間ずつ、各個体の位置と行動を1分ごとに記録した(行動調査)。また、これらの調査中に給餌が確認された場合には、直接観察やヒアリングによって給餌の頻度・量・内容を記録した(給餌調査)。

図1
図1.調査回ごとの繁殖・非繁殖個体数

 生息・繁殖状況について、3度の繁殖調査で確認できた成鳥の最大数は55羽、若鳥は23羽、雛の最大数は23羽であった。コブハクチョウの繁殖個体数は、調査期間を通じてほぼ一定であったのに対して、非繁殖個体数は回を追うごとに減少していった(図1)。抱卵中の巣あたりの平均卵数は 7.4 個(310個)で、雛を連れたつがいあたりの平均雛数は 2.9 羽(16雛)であった。後者を繁殖成功とみなすと、繁殖成功率は 38.5 %となった。

 給餌調査から、12営巣地のうち7営巣地で定期的な給餌が行われていることが確認できた。定期的な給餌の有無でつがいを比較すると、卵数には有意な差がみられなかったが、定期的な給餌があるつがいの方が繁殖に成功した割合が有意に高かった。また、定期的な給餌の有無では行動に有意な差はみられなかった。

 北米では沈水植物の食害など、コブハクチョウによる様々な悪影響が報告されている。霞ヶ浦では湖岸植生の再生事業が進められているが、再生した沈水植物や浮葉植物がコブハクチョウの食害を受けているとの指摘がある。今後、生息数がさらに増加した場合、北米と同様の被害を及ぼす恐れは十分にある。非繁殖鳥が調査を追うごとに減少していったのは、繁殖地を求めてどこかへ分散していることが考えられる。また、給餌によって繁殖成功に差がみられたことは、給餌が新たに生産される若鳥個体数を増やしている可能性がある。

[JOGA第10回集会「ガンカモ類外来種の現状と対策及び今後の課題」2008年9月13日]

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URL: http://www.jawgp.org/anet/jg013c.htm
2008年9月4日掲載,9月9日更新,JOGA