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JOGA
JOGA14
(2011)

東アジア・オーストラリア地域渡り性水鳥重要生息地ネットワーク(ガンカモ類)支援・鳥類学研究者グループ:JOGA
第14回集会「東日本大震災の湿地への影響をガンカモ類などの調査を通してどう把握するか」

講演3

宮城県周辺の沿岸湿地や内陸湿地の現状とガンカモ類

呉地 正行(日本雁を保護する会)嶋田 哲郎(宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団)


 3.11大震災で東北地方の太平洋岸は大きな被害を受け、それに伴い環境面でも大きな変化が起きた。それがガンカモ類などの水鳥の生息環境に与える影響とその可能性及び今後の課題について考える。今回の震災で環境変化を引き起こした原因は、主に1)地震、2)津波、3)地盤沈下の3つに分けることができる。

図1
図1.亀裂の入った伊豆沼の堤防.

図2
図2.津波をかぶった内陸の水田で採食するコクガン.

 1)地震自体の水鳥の生息環境に与える影響については、震度が高かった宮城県内陸の伊豆沼や蕪栗沼などでは堤防に亀裂や沈下が生じ、危険箇所については緊急処置が行われている(図1)。また河川の堤防も多くの地点で被害を受け、弱体化しているので、今後豪雨等が起きた場合、湖沼または河川堤防が決壊し洪水が起き、それが来年以降の越冬期に何らかの影響を及ぼす可能性がある。

 2)津波の水鳥の生息環境に与える影響は、津波で計り知れない被害を受けた沿岸域でみられるが、平地が少ないリアス式海岸の岩手、宮城の三陸沿岸域、その南で多くの島が点在する松島湾、更にその南の宮城県・仙台湾から福島県沿岸に至る砂浜海岸でその影響の程度は大きく異なる。リアス式の三陸沿岸ではコクガン、ヒドリガモなどのように,主に養殖漁業の筏やそれを係留するロープなどに付着する海藻類を水面採食し、スズガモのように潜水して貝類を採食すると考えられるガンカモ類が生息していたが、大津波により養殖漁業筏は壊滅し、貝類の生息基盤となる海底は津波の引き波による瓦礫の堆積や砂泥層の減少・消失したためその影響を強く受けていると思われる(図2)。
 一方、平野部では津波により沿岸部の水田地帯に津波が押し寄せたため、農地として再度利用するためには瓦礫の除去と津波による塩分を「除塩」する作業が必要となる。この取り組みは条件が整っている地域では開始され、「ふゆみずたんぼ」が除塩手法としても有効であることが分かってきたが、復田作業が進まないところもあり、水田を生息環境とする水鳥にとっては環境収容力低下に伴う個体数減少が危惧される。

 3)今回の地震により、沿岸域が全体的に平均1m前後地盤沈下した。このことが水鳥の生息環境に与える影響については、平野部の沿岸域で最も大きいと考えられる。平野部の沿岸域の水田地帯では、地盤沈下により、海抜0m以下となり、津波で浸入した海水が現在も滞留し、新たな水域が生成したところが多い(図3)。これらの水域を水田に復元することは困難で、これも水田の環境収容力を減じる要因となるが、その一方で地盤沈下による新たな湿地環境が創出されたことも事実である。これらの変化が今後沿岸域の水域・湿地に依存する水鳥にとってどのような影響を与えるのかを環境面も含めてモニタリングして行くことは重要な点で、そのためには新たな視点を取り入れたモニタリング手法の検討も必要になると思う。

図3.地盤沈下で沿岸域にできた水域.

[図3は,
国土交通省報道発表資料・平成23年4月28日「仙台平野における地震に伴う地盤沈下について」の添付資料の「別紙」(http://www.mlit.go.jp/common/000143300.pdf [1.8 ])のPDFファイル第1頁の図「地盤沈下の状況.平成23年4月28日・国土交通省・宮城県」を参照して下さい.]

 さらに震災にともなう原発事故は、放射能の拡散によって広域的に永続的な被害が予想される。放射性物質は目に見えず、感じることもできない。数値を読みとることでしか、把握することができない。放射線対策としては、さまざまな媒体を用いてできる限りの数値を集める必要がある。広域的にそして地域的にさまざまな尺度で情報を集める。さらにできれば線量計(表1)を用いて自分なりにデータを集める。データを集めて自分の置かれた状況を総合的に客観的に判断する必要がある。

表1.γ 線を計測したときの各種線量計数値の比較
   時間ごとに撮った写真から数値を読みとった.数値の単位はマイクロシーベルト毎時.
製品写真 Mr. Gamma A2700 RADI PA-1000 TERRA MKS-05
製品名Mr. Gamma A2700Radi PA-1000Terra MKS-05
製造会社・国Clear-Pulse・日本Horiba・日本Ecotest・ウクライナ
計測方法シンチレーションシンチレーションGM計数管
価格14万円程度13万円程度12万円程度
1分ごとに5回計測した平均値(登米市、大崎市の計測方法)
範囲
0.050
0.045 - 0.052
0.052
0.045 - 0.058
0.12
0.11 - 0.12
15秒ごとに8回計測して,最大、最小を除いた6回の平均値
範囲
0.050
0.048 - 0.052
0.055
0.054 - 0.056
0.11
0.11
30秒ごとに8回計測して,最大、最小を除いた6回の平均値
範囲
0.047
0.043 - 0.054
0.058
0.055 - 0.061
0.10
0.09 - 0.10
備考
行政でよく用いられる

[JOGA第14回集会「東日本大震災の湿地への影響をガンカモ類などの調査を通してどう把握するか」2011年9月17日]

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URL: http://www.jawgp.org/anet/jg017c.htm
2011年9月10日掲載,9月15日更新,JOGA