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鳥類学研究者グループ:JOGA 第3回自由集会 事例報告2

オナガガモのつがい形成行動とその進行過程

福田 道雄(東京都葛西臨海水族園)

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 オナガガモは、日本で冬の間を過ごす代表的なカモの一つで、給餌の行われているカモ類の飛来地をよく利用する。そして、比較的容易につがい形成行動が観察できる。私は、1960年代から給餌が始められた、都市公園の池(東京都台東区上野公園の不忍池)でカモ類の調査を行った。この調査地では1970年代から1980年代前半まではオナガガモが優占種となっていて、その時期を中心につがい形成行動を観察した。では、オナガガモのつがい形成行動を説明し、つがい形成がどのように進行するかを解説しよう。

1.つがい形成行動

1)囲み追い

 オナガガモ独得のもので、他種ではみられない。オナガガモが多数飛来した水辺では、1〜2月頃に注意深く観察していると、数羽以上のオスが1羽のメスを囲むようにして、追いかけていく光景がよく見られる。この集団の活動を「囲み追い」と名付けた。「囲み追い」が始まると、集まったメンバーはほとんど入れ替わることなしに続けられる。その周囲に浮かんでいるカモたちは関心を示さないので、この一団だけがまとまって群の中を移動して行くので、よく目立つ。そしてこの集団のオスたちが、求愛のディスプレイを繰り返して行う。

2)求愛ディスプレイ

 よく目立つディスプレイは、次の4種類である。ただし多くの場合、一つのディスプレイが単独で行うよりも、組み合わせたり、一連の行動として行う。

  1. あご上げ−攻撃と逃避の入り交じった気分を示すもので、オス・メスともに幼鳥時から行われる基本的なディスプレイである。
  2. げっぷ−メスにマウントをしようとする意図が込められていて、メスの後方に近づいたオスがよく行う。嘴を引き、上げた頭を下げる時に「ピュー」という笛声を出す。
  3. 水はね鳴き−「げっぷ」の時よりも、メスから離れた位置で行われ、しかも、メスに対してどの方向からも行われる。引き寄せる嘴の先で水をはね上げ、頸が突き上げられた時に笛声を出す。
  4. そり縮み−「水はね鳴き」の後に続いて行われる、セットになったディスプレイである。オナガガモやコガモでは、引き上げられた尾の側面にある、下尾筒のクリーム色の部分が視覚的に強調される。このディスプレイの後、目当てのメスの方に嘴を向ける。

 また、このようなディスプレイが見れる水辺では、「囲み追い」の一団が、メスを追って飛び立ち、飛行しているのも見られるだろう。よく観察すると、オスたちは飛びながら、頸を動かしたり、胸をそらしていて、飛行時用に変形した上記のディスプレイをしていることがわかる。

2.つがい形成とその後の行動

 観察していて、「囲み追い」で取り囲まれたメスが、どのオスを選んだかは、なかなかわからない。メスは「囲み追い」が始まった時にはすでにオスを選んでいるか、数秒か数分のうちには選ぶといわれる。メスは時々選んだオスの方に、体の向きを転じることで選んだことを示す。そして、選ばれたことがわかったオスは他のオスよりも「あご上げ」と「げっぷ」をより多く行うようになる。選ばれなかったオスは「水はね鳴き」と「そり縮み」をより多く行う。そして、1羽の同じオスが、他のオスに向かって攻撃をしかける光景が次第によく見られ始める。

 つがいができると、オスは頸をまっすぐに立てて頭の羽を膨らまし、後頭部がメスに見えるようにし、先導して泳ぐ。このディスプレイは「後頭さし向け」と呼ばれる。メスは、近寄るオスに背を向け、嘴を背越しに斜めに振り、低い鳴き声をせわしく出しながら「けしかけ」のディスプレイをする。このディスプレイはカモ亜科に広く共通するメスの代表的なディスプレイである。 なお、この二つのディスプレイは、つがい形成の上で重要な役割をはたすとされている。その後、つがいは群から離れて過ごすことが次第に多くなり、他のオスもほとんど近寄らなくなる。

[JOGA第3回自由集会「越冬地におけるガンカモ類の羽衣と社会行動」(その1) 2001年10月6日]

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このページは「東アジア地域ガンカモ類重要生息地ネットワーク」公式ホームページ(http://www.jawgp.org/anet/)の一部です. 2001年9月17日掲載.