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JOGA
JOGA10
(2008)

東アジア・オーストラリア地域渡り性水鳥重要生息地ネットワーク(ガンカモ類)支援・鳥類学研究者グループ:JOGA
第10回集会「ガンカモ類外来種の現状と対策及び今後の課題」

報告1

外来種としてのカナダガン大型亜種の分布と個体数の変遷及びその問題点

呉地 正行(日本雁を保護する会)


カナダガン(Branta canadensis)は、大きさ、体色などが異なる8つのグループ(亜種)に分類されている(Palmer, 1976)。このうち日本に渡来する在来亜種は、主に亜種シジュウカラガン(B.c. leucopareia)である。この小型の亜種は、ごく近い将来に絶滅の危険性が極めて高いために、種の保存法で国内希少野生動植物に指定され、環境省のレッドリストでは、「絶滅危惧A(CR)類」に分類されている。また、日ロ共同で長年にわたり羽数回復事業が行われており、最近はその成果が現れて毎年数十羽が確認されるようになった。

図1.大型外来亜種の個体数と観察地点数の変化.

一方でこの在来亜種よりも明らかに大きい亜種オオカナダガン(B.c. moffitti)と考えられる大型の外来亜種が1985年頃から野生化し始めた。当初、その生息地は富士山麓に限られていたが、その後、分布域は西は長野県から東は茨城県、そして亜種シジュウカラガンの主要越冬地である宮城県まで拡大している。これまでに少なくとも40箇所で最大66羽が確認され、そのうちの7箇所で繁殖が確認され、在来の希少亜種と交雑する可能性が強く危惧されるようになった。そのため、環境省では、この大型亜種を外来生物法に基づき、要注意外来生物に指定しているが、小型の在来亜種のシジュウカラガンと大型の外来亜種のオオカナダガンは、外部形体が似ていることとなどのために、両者が区別されずに記録されていることも多く、それぞれの実態を把握する上で大きな問題点となってきた。特に全国一斉に行われている全国ガンカモ類生息地調査では、種名や亜種名の表記上の問題もあり、シジュウカラガンとして記録されているものの多くが、外来亜種であることが判明した。図2.リーフレット.この問題を解決するために、両亜種を識別するためのリーフレットが生物多様性センターにより作成され関係者に配布された。このリーフレットの配布は、外来亜種についての認識を高める効果があり、千葉県では我孫子市手賀沼に定着していた、外来亜種を捕獲し、行徳野鳥観察舎に収容した。

[JOGA第10回集会「ガンカモ類外来種の現状と対策及び今後の課題」2008年9月13日]

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URL: http://www.jawgp.org/anet/jg013a.htm
2008年9月9日掲載,JOGA