[ 重要生息地ネットワーク ]

[ 日本鳥学会 ]

[ 環境省「インターネット自然研究所」 ]

JOGA Logo (21KB)

ガンカモ類重要生息地ネットワーク支援・
鳥類学研究者グループ:JOGA 第4回自由集会 事例報告2

テレメトリーを用いたカモ類の夜間の水田利用調査(石川県・片野鴨池)

山本 浩伸(鴨池観察館友の会)・大畑 孝二(日本野鳥の会サンクチュアリ室)

[ Index ] [ Back ]


 片野鴨池は1993年に「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約(ラムサール条約)」の登録湿地となった.しかし,近年飛来するカモ類,とくにマガモ Anas platyrhynchos とトモエガモ A. formosa が減少している.マガモの減少の原因として,カモ類が採食場所として利用してきた鴨池周辺水田の環境変化による採食地の減少,県道拡幅や高速道路敷設による都市化などが考えられている.そこで,本研究では鴨池周辺の水田環境の変化に注目し,マガモを捕獲し発信機を装着して追跡することで,冬期の採食範囲についての情報を得,片野鴨池で越冬するマガモの減少と水田環境の変化との関係を検討した.

 カモ類の捕獲は,1999年12月10日から2000年2月15日にかけ,片野鴨池に伝わる伝統猟法である坂網をもちいて行なった.捕獲したカモ類はマガモ,コガモ,トモエガモ,ハシビロガモ,ホシハジロで,合計15羽であった.

 追跡の結果,カモ類は片野鴨池から11km以内の,おもに加賀市内の水田で採食していた(図 1).もっともよく利用されていた水田は,カモ類の採食環境を整備するために水が張られ,籾が撒かれている冬季湛水水田であった.また,カモ類は同一の水田を数日間連続して利用する場合と1日しか利用しない場合とがあった.同一の水田を利用した日数の平均は 3.62±2.14日間(mean±S.D.N=13,range: 2-9日間)であった.前日までの水田を利用しなくなったカモ類は,日中は片野鴨池で休息し,夜間に調査地内の別の水田を利用する場合と,片野鴨池で日中記録されなくなる場合とがあった.

Figure (28KB)

図1.カモ類が採食していた水田の分布.印がカモ類が採食していた水田の位置を示す.

Figure (10KB)

図2.暗渠排水工事の累積実施面積とマガモの個体数.縦軸がマガモの個体数(羽),横軸が累積実施面積(ha).y = -20.003x + 39990.828 (r2=0.720, P<0.0001).

 もっとも多く捕獲することができたマガモについて,マガモの個体数と加賀市内の水田の暗渠排水工事(乾田化事業)の累積実施面積のあいだには有意な負の相関があった(図 2).また,イネの作付け面積とマガモ個体数のあいだにも有意な負の相関がみられた.

 片野鴨池で越冬するマガモの個体数の減少には水田環境の変化が関係していると考えられたので,マガモの個体数の減少を抑制するためには農家と協力し水田への冬季湛水を行なうなど,採食環境を整えることが有効である.

[JOGA第4回自由集会「水田農業とガンカモ類 〜「対立から共生へ」その鳥学的戦略〜」 2002年9月14日]

[ Index ] [ Subject ] [ Top ] [ Back ]

[ 重要生息地ネットワーク ]

[ 日本鳥学会 ]

[ 環境省「インターネット自然研究所」 ]

「戦略」ロゴ (10KB)

「東アジア地域ガンカモ類重要生息地ネットワーク」は
国際湿地保全連合のロゴマーク (7KB)
国際湿地保全連合が
「アジア・太平洋地域渡り性水鳥保全戦略」に基づいて
提唱している国際協力プログラムです.

国際湿地保全連合日本委員会 ガンカモ類フライウェイオフィサー 宮林 泰彦, 989-5502 宮城県 栗原郡 若柳町 字川南南町16 雁を保護する会 TEL&FAX 0228-32-2592 / E-mail: yym@mub.biglobe.ne.jp.

このページは「東アジア地域ガンカモ類保全行動計画・重要生息地ネットワーク」公式ホームページ(http://www.jawgp.org/anet/)の一部です. 2002年8月8日掲載.